Advantech
製品選定ガイド
2012/1/26

今からちょうど30年前、1982年に日本で最初の産業用PCが発売されました。以来、日本の産業用PCは発展を続けて現在に至ります。今日では、シーケンス制御や計測機器など、新しい使途も含めたシステムも珍しくなくなりました。いまや産業用PCは無くてはならないもの、計測制御に欠かせないものとなりました。 Advantechでは、幅広い産業分野の要求仕様を満たすための選択肢として、さまざまなコンピュータシステム製品をご用意しています。各種製品を組み合わせてご使用頂くことで、最適なシステム構築ができます。

ところで幅広い選択肢から適切な製品を選ぶためには、要求仕様の中から技術的な選定要素を押さえて、抜け漏れのないように製品仕様を決める必要があります。

ここでは適切な製品選択のプロセスをご説明いたします。
なお下記の選定要素は、案件ごとに優先順位が異なりますので、要求仕様に合わせて優先順位を変えて機種選定を行ってください。

 

システム選定のポイント 項目をクリックするとジャンプします
システムの処理能力
大きさ・形状
拡張性
価格
電源ユニットと消費電力
静音性
メンテナンス性
耐環境性
安定供給
システム仕様の明確化/不明点の抽出/ヌケ・モレのチェック

システムの処理能力
処理速度は、最初に考慮すべき項目のひとつです。
演算処理速度は、下記の要素に依存します。
CPUの種類(アーキテクチャ、バス幅、組み合わせるチップセット等)
システムの能力はCPUの処理速度が大きな影響を与えます。クロック速度、バス幅によって、単位時間当たりのデータ処理量が違います。
マルチタスク、画像処理、関数演算などのリアルタイム性を要求されるアプリケーションソフトを使用する場合は、能力が高いCPUを選択する必要があります。
単純なシーケンス処理やI/O監視など、逐次処理で良く速度を要求されない用途の場合は、リーズナブルなATOM系やVortex系も選択範囲に含まれます。
OS
市販のアプリケーションソフトや自社開発プログラムで使用する開発環境などは、OSに適合したものでないと動作しませんので、リアルタイム性、マルチタスクの必要性、I/Oのサポートなど、システムの特徴に見合ったOSを選択します。
ストレージ
システムのストレージには大別してHDDと半導体ストレージ(SSD・CF等)があります。
現在の主流はHDDですが、機械的な動作機構があるために設置場所の温度・振動の制約が半導体ストレージに比べて厳しい欠点があります。
SSDはHDDに比べてアクセス速度が高速で、耐振動性や広範囲の温度環境で使用できますが、製品保証の書き込み回数が少ない点や、容量当たりの価格がHDDに比べて高価なので、大容量の製品が少ないのが欠点です。
CFは小規模システムで利用が多いストレージデバイスです。価格も安く、小型軽量なので組込用途に便利ですが、他のストレージデバイスに比べて容量が小さかったり、アクセス速度が遅いなど、使用時にはOSとアプリケーションがインストールできる容量の製品を選択し、動作時の速度が問題ない事を確認します。
メモリ容量
メモリ容量は、使用するソフトの要求量を確認して、それを上回る容量を実装します。メモリ容量が足りないと、OSがデータをストレージに一時退避させる「メモリスワップ」が発生し、処理速度が著しく低下しますので、注意が必要です。
グラフィック機能
グラフィック機能に関する部分は、システム全体の処理速度を低下させる原因になる場合があります。
マザーボードやCPUカードに搭載されているチップセット上のグラフィック機能を使う場合は、メインメモリをグラフィック用に使用します。そのために、CPUのメモリアクセス速度が低下し、プログラムの処理速度が低下します(CPU上のグラフィック機能を使用するCore iシリーズも同じです)。
そのほかに、表示内容が3D画像やポリゴン画像など複雑な場合、グラフィック演算が多くなり、画像の表示速度やプログラムの処理速度が低下します。
このような場合は、処理能力が高いグラフィックカードを使用することで、システム全体のパフォーマンスを改善します。グラフィックカード上に描画用CPU(GPU)を搭載した製品は、本体CPUで行っていた描画処理をグラフィックカード上で行うので、本体CPUやメモリの負荷を軽減します。
データI/Oとバス速度
データI/Oカードは、割り込みやDMAを使用してデータ転送を行うので、システムバスを優先的に使用します。その結果として他のデバイスに影響を与える場合があります。
各カードバスやコネクタの理論上のバス帯域を考慮して、I/Oデバイスの選定をします。
代表的なI/Oバスの理論上の最大速度は下のとおり。
PCI Express3.0 1GB/s(1レーン当たり)
PCI Express2.0 500MB/s(1レーン当たり)
PCI2.0  133MB/s(32ビットモード)
USB2.0 480MB/s
IEEE1394b-2002        800MB/s
同じ種類のバスにデータが集中しますと、速度が低下するだけではなく、システム停止の原因ともなります。
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大きさ・形状
物理的な形状がシステムの絶対的な要求事項になる場合は、シャーシの選定から入ります。シャーシは、その形状だけではなくて、コネクタの接続方向や放熱性も考慮に入れて周辺空間と共にデザインします。
ラックマウントシャーシ
ラックマウントシャーシは、大型のシャーシで、約480mm(19インチ)の横幅です。
シャーシの高さによって1U/2U/4Uなどの種類があります。
4U 2U 1U
4Uシャーシ 2Uシャーシ 1Uシャーシ
ウォールマウント・デスクトップシャーシ
ウォールマウント・デスクトップシャーシは、ラックマウントシャーシより小型で、システム組込用途のほかに、デスクトップでも使用できます。
ウォールマウントシャーシ
ラックマウントシャーシと一部のウォールマウントシャーシを選択する場合、マザーボードタイプとバックプレーンタイプでは、適合するシャーシが違いますので、それぞれに適合する物を選択します。両者は基板を固定するスタッド位置に互換性がないので、バックプレーンを使用するときはバックプレーン適合品を選択し、マザーボードを使用するときはマザーボード適合品を選択します。
ファンレスシャーシ
ファンレスで、放熱をシャーシ表面からの放射で行うタイプのシャーシです。
小型で組込に便利です。
 
ARKシリーズ UNOシリーズ
ファンレスPC
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拡張性

拡張性とはカードスロットや各種ポートなど、基本システムに機能を増やすための機器が容易に接続できる能力を指します。

カードスロット
I/Oカードなどの機能拡張カードは、マザーボード・バックプレーンに搭載されたカードスロットに装着します。
スロットにはいくつかの種類がありますので、注意が必要です。
I/Oポート
マザーボード・CPUカードは、I/Oポートが外部装置と接続するために搭載されています。
リモートI/Oやネットワーク機器と接続する場合に使用します。
マザーボード

バックプレーン

マザーボード CPUカード バックプレーン
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価格
価格はシステムを検討する上で大きな制約になります。むやみにハイスペックなシステムを選択すると、量産時にコスト面で構成要素の見直しを迫られる場合があります。
要求仕様の最初に立ち返り、絶対に必要な機能は何かという視点で、各要求項目別に具体的な指標を作ります。このメモに従って、製品一覧から必要な項目を満たしている最適な製品を選びます。
また、CPU、メモリ、HDDなどの構成部品は、市場価格が大幅に変動する可能性がありますので、常にご注意ください。
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電源ユニットと消費電力

システム全体での消費電力は、周辺機器まで含め電源ユニットの検討が必要になります。

パフォーマンスが高いシステムは、消費電力が多くなりがちです。必要に応じたCPU、メモリ容量を選択して最適化を図ることで省電力化につながり、システム全体の信頼性も高まります。
CPUとチップセット
CPUは、演算処理が多くなるほど消費電力が増えます。同様に、チップセットもデータ通過量が増えるほど消費電力が増えます。常に公称値の電力を消費するのではありませんが、電源ユニットの選定にはピーク時の消費電力を基準にする必要があります。
メモリ
メモリは、一般的には容量が多くなると電力消費量が増えます。アプリケーションを動作させるために必要な最小限の容量を搭載するほうが良いでしょう。
HDDとオプティカルメディアドライブ
HDDやCD・DVDなどのオプティカルメディアドライブなどは、起動時に電力消費が最大になります。定格ぎりぎりの電源を使用していると、システムの起動時に不安定になり、確実に動作しない場合がありますので、電源ユニットの選定は容量余裕を持たせてください。
グラフィックカード
グラフィックカードは常にデータを更新するデバイスなので、電力の消費量は多くなります。特に高性能グラフィックカードは、100W以上消費する製品もあります。
拡張カード
拡張カードは、外部との信号の入出力に電流を使う製品があり、製品仕様書の公称消費電力量を確認します。
ここで挙げた項目以外にもファンやUSBに接続したデバイスなど、電力を消費する部品がありますので、電源ユニットの選定は容量に余裕を持たせる事が必要です。
システム全体の消費電力を算定した後に、各項目を見直して、オーバースペックな仕様などで電力消費量が突出している項目があれば、再検討します。
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静音性
産業用PCも用途が多様化し、住環境やオフィスに設置される場合も増えました。その場合、システムから発生するファンのノイズなどが問題になる場合があります。
Advantechでは静音性を高めた静音PCや、ファンを使用しないファンレスPCをご提供しております。
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メンテナンス性
設置後にシステムの拡張や変更が考えられる場合、システムのメンテナンス性を考慮します。
故障時やシステム変更時の容易な部品交換を考慮したシステム構成にすることで、オンサイト作業の負担が軽減します。
設置後のワークフローを考えて、仕様決定時にメンテナンス時のシミュレーションを行う事をお勧めします。
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耐環境
設置環境が厳しい温度環境や振動を伴う場合、システム選定には注意が必要です。
通常のPCはオフィス環境で静的な場所に設置する条件で設計されておりますが、 産業用PCでは多様な環境で使用されることがあり、雰囲気温度が高温や低温な場合、設置場所が振動を受ける場合なども想定されます。
Advantechは、耐振動コネクタを使用した製品や広範囲の動作温度範囲を保証したPCなど、産業用途に適した製品をご用意しております。また、産業用PCシステムの仕様書には、このような耐環境性に適合した下記内容を明記してありますのでご覧ください。
IEC60068-2-2:動作温度範囲
IEC60529:2011:防塵、防滴規格
IEC60068-2-64:耐振動保証
このほか、絶縁・電気ノイズに関しましては、製品毎にカタログに記載しています。
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安定供給
CPUなどの製品は、通常は2年以内で製品供給が終了しますが、Advantechは平均3~5年の製品ライフサイクルがあるため、保守品の入手性などを考慮するシステムに適したソリューションです。
 
以上のようなポイントのチェックをすると、システム仕様が明確になります。この段階で不明点を洗い出して、詳細な要求仕様を具体化することができます。完成時のシステム仕様書に使用できるドキュメントの原型にもなりますので、この作業は無駄にはなりません。

産業用PCシステムの選定で解らない点やお困りのことがありましたら、
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また、ホームページでは各種ソリューションがご確認できます。
下記URLも併せてぜひご覧ください。
     Advantech BTO ソリューション

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